行方不明騒動の真相とは?
浮き名で有名な喧嘩屋の恋愛発覚か?

 ○日夕刻、相楽左之助(無職・一九)が数人の自称舎弟達と店を出た後、突然姿を消した。慌てた数名の友人達は必死で行方を探したが、見つからず、職業が表沙汰に出来ない為、捜索願も出さずにいたという。同時刻に神谷道場主の神谷薫から緋村剣心(無職・二八)の捜索願が提出された直後であり、川路警察長がたまたま通りかかった相楽の友人達に職務質問したところによると、「彼らに問いつめたらどうやら逢い引きではないかと言うので追い返しました」と冷静な対処をしたという。「偶然にしては同時刻と言うのがあやしい、奴らは出来ているんじゃないですかね、全く最近の若者はまともに働かんくせにやる事だけは一人前…」と呆れ気味だった。
 相楽左之助は元、喧嘩屋の名で裏稼業で知らぬ者はいないと言われる程の有名人。珍しい長身と喧嘩の強さで身に覚えのある者は避けて通る無頼漢。一方、緋村剣心は赤毛に蒼い目、頬に十字傷という極めて華奢な体躯は帯刀していなければ女性と見まごう程の麗人である。この目立つ二人が連れ立っている姿は幾人もの証言が有り、街中で疾走する姿も数度目撃されている。
 元上司の桂小五郎氏によれば「緋村が私の元にいた頃は十字傷も無く、あまりに可愛いのでよく稚児と間違われましたよ、ははは…、え?彼がですか?いや、それは無いと思いますね、淡白どころかまったく他人に興味の無い子で…まさかそんな…いや、そうだとしたら私の我慢は一体…」と困惑を隠せない様子。古くからの知人、藤田五郎警部補(元新撰組との噂が有る)の証言によると、「彼らは言ってみれば利害関係の無い間柄、何があってもおかしくないし今更驚きは無いですね」と何かを知っている様子。同記者が問いつめようとした所日本刀を手にしたと言うので慌てて取材を中止、どうやら抜き差しならぬ間柄らしい事だけは推測出来る。同行した絵師、月岡津南(一九)に確認したところ、今後も取材を続行したいと担当者二名は意欲を見せている。
          担当記者  草野庵